将来をみすえて
しっかりとお子さんを見てその子に合った支援をします。
子笑では、お子さんに合わせた「自立支援課題」(=アセスメントのうえ個人に必要と思われる作業)を提供しています。
「自立支援課題」をおこなう目的は、将来を見据えてできることを増やすことにあります。できることを増やすためには、それを取り組むことで、達成感や成功体験を得ることも重要になってきます。「自立支援課題」は、課題の工程や終了が分かりやすいため、支援者のサポートをうけることなく、一人で取り組み、終了させることができます。
また、視覚的な指示表現を見て取り組むことから、注目するところが何なのかを学ぶこともできます。これも、もちろん個別の状態によって提供する課題の内容が違ってきます。何に着目したらよいかといった学びを繰り返すことで、例えばスケジュールに注目することが身についた事例もあります。
お子さんの興味・関心や「できる部分」「できそうな部分」を個別にアセスメント(観察や、発達段階検査を実施)し、職員が自立支援課題を考案・作成したり、専門の療育グッズを提供しています。(※下の写真は自立支援課題のごく一部です。)
支援事例
①活動時間に、学習や課題に取り組むことが難しかったお子さんが、学習のプリントの置く場所を変えることで、学習や課題に取り組むことができた事例を紹介します。
- A君(8歳・男性)
- 自閉症スペクトラム 、愛の手帳(療育手帳)2度 指標該当有
- 2015年4月 通所開始
- 当時のA君の様子:言葉によるスムーズなコミュニケーションは難しい状態
- A君自身も発する言葉は単語、職員からの言葉かけに対して応じることもあまりない
保護者が望む長期目標 → 活動へ参加して、興味の幅を広げたい。座って取り組むこともできるようになってほしい。
―課題―
- 能力はあるが、学習や、課題に取り組むことができない
- 場面から場面の切り替え時に、癇癪を起してしまうことがある
- 集中力の持続が難しい
- 口頭での指示や、言葉かけでは行動に移ることが困難
―支援の内容―
【当時の学習場面での状況】
2016年7月
おやつを食べた後、学習に移る場面。学習に移行できず、窓から見える電車を見に行ってしまったり、感覚刺激行動(クルクル回ったり、身体をゆする行為)に没頭してしまう。注意散漫な様子。
A君は、点つなぎ(1~10まで)、ひらがなのなぞり書き、パズル、型はめ、等、気分や調子が良い時は取り組むことができますが、安定した取り組みは難しい状況でした。10回通所して、2回取り組めるといった状況でした。
【学習に移行する場面の行動を分析する】
安定して、A君が学習に取り組めるにはどうしたら良いのか、まずA君の行動を改めて分析することから始めました。
分析に際して、A君が自主的にできている行動に着目して観察をしました。まず、おやつを食べるという行為は「いただきます」の声掛けがあれば、時折周囲に気を取られてしまうことはあるものの、食べ終わることができています。
その後、「ごちそうさまでした」と自ら言い、おやつを食べた器を、下膳場所までもっていくこともできました。ここまでが自分でできる行動。その後職員が「べんきょうの時間ですよ」とスケジュールを指さして、学習机まで誘導しようと試みますが、クルクルと体を回転させて誘導には拒否をしてしまいます。時には、大声を出して拒否的な様子もありました。
【A君のできている行動に着目する】
さらに、別の場面でもA君のできる場面を確認しました。A君は、通所してから靴を靴箱に入れることや、カバンをロッカーに入れることはできます。
これらに共通しているのは、その場所で何をすれば良いのか表示や指示があることです。「靴を入れます①」と靴箱の上にイラストと文字があります。「カバンをしまいます②」とロッカーの上にイラストと文字があります。次におこなう行動について、番号順にその場に表示があります。
しかし、おやつを食べた後にする行動については、離れた場所にスケジュール表はありますが、おやつを下げたタイミングで本人の目につく場所にはありません。
【おやつの下膳先に学習の道具を用意する】
これらA君のできている行動を基に、おやつを食べ終わって皿やコップを下げた先に、学習道具を用意してみました。
すると、A君は自ら学習道具を自ら手に取って、学習に取り組むことができました。
この取り組みを始めてから、10回通所して2回取り組めていたのが、10回通所して7回取り組むことができるようになりました。
本人の座って学習する機会も格段に増え、徐々に難易度が高い課題にも取り組めるようになってきました。
スケジュールも提示してあれば良い、というわけではなく、そのお子さんが活用できているか、理解度や、着目の仕方等を個別に分析し、お子さんの状態に合わせた「予定を知らせる方法」を工夫していくことが重要だと感じた事例でした。
②衝動的な行動や、多動行動が激しいお子さんが、スケジュールを使用し、見通しを持って活動時間を過ごせるようになった事例を紹介します。
- B君(9歳・男性)
- 自閉症スペクトラム 、愛の手帳(療育手帳)2度 指標該当有
- 2018年4月 通所開始
- 当時のB君の様子:言葉によるスムーズなコミュニケーションは難しい状態
- B君自身も発する言葉は2語文程度、職員からの言葉かけに対して応じることもあるが、視線に入った興味のあるものに惹かれて衝動的に行動をする
保護者が望む長期目標 → 興味の幅を広げたい。座って取り組むこともできるようになってほしい。
―課題―
- 衝動的な行動や突発的な行動場面が非常に多い
- 全体のスケジュール内容に合わせて過ごすことが難しい
―支援の内容―
【当時の様子】
2018年4月
事業所に通所すると、まだ慣れないせいもあるのか、いろいろな教材や道具に目が移り、突発的に走りだすなどの行動が見られました。
席に座り、学習や課題に取り組むように伝えますが、次々に注意が移り、職員もB君の後を追うことでやっとといったところでした。
【座って取り組む場面を増やす】
座って学習に取り組む場面を設定するにはどうしたらよいのか…まず、B君の取り組む環境を以下のように整備をおこないました。
- B君用の席の固定…取り組む場所が毎回違うと混乱してしまうため
- B君の席に、好んでいるキャラクターのイラストを貼る…B君が自分の席であることを意識して、自分でその席へ向かえるようにするため
- パーテーションで座席の刺激を調整…色々な物や、人がB君の目に入り、集中力が途切れてしまうのを防ぐため
- B君の個別スケジュール表の使用…学習や課題がどのくらいあるか、見通しを持って活動時間を過ごせるようにするため
提供する課題については、「自立支援課題」を10種類提供しました。10種類というと多いような印象ですが、B君が見て、取り組みの内容がすぐに理解できる簡単な課題が10種類です。(色合わせのマッチング課題、型はめ、2個のブロックの組立て)それらを紙に書いたスケジュールに沿って取り組んでいきます。
課題が終わったら、スケジュールに〇をして、次の課題に取り組みます。全て終わったら、余暇の時間。あらかじめ保護者等から聞き取っていたB君の趣味や、楽しめそうなオモチャや本を用意しておきました。
【取り組む環境を調整した状態で取り組んだ結果】
環境を整えて、B君に学習時間に自立支援課題に取り組んでもらいました。通所して、学習の机までの誘導は、初回は職員が声をかけ伝えました。(2回目以降自分で向かっています。)誘導すると、自分の名前と好きなキャラクターを確認し、自分の場所であることを認識した様子でした。
スケジュールの使用方法と、今日取り組む課題について簡単に説明すると、直ぐにB君は課題に取り掛かりました。
10種類の自立支援課題でしたが、B君は20分程度で完成させることができました。
全て、職員を呼ぶこともなく、「色別にカードを分ける」「同じマークの種類で集める」
など、視覚的に理解し取り組めていました。
B君は、学習時間に自立支援課題に取り組むことができました。
環境を整える前と後で、B君の様子には劇的な変化がありました。
とはいえ、これは学習時間に限っての話で、その後の余暇時間では、引き続き、衝動的に興味や関心のある事柄に惹かれ、行動する様子が続いています。
しかし、学習場面で活用できている、スケジュールや、タイマーは他の場面でもB君の役に立っています。余暇時間から、音楽活動や、体操に移る場面でも、タイマー音やスケジュール確認で、余暇の時間を切り上げることができています。
職員の声掛けや、指示がなくても、自ら見通しを持って行動できている姿があります。
1日の流れ
子笑の利用者様の過ごし方を大まかにお伝えします。
<平日・低学年児の一日の流れ>
13:30~ | 送迎 |
14:10 | スタート(スケジュール確認) |
14:20 | グループ活動(運動)個別活動(学習) |
15:00 | おやつ |
15:15 | 個別活動(自立支援課題・創作活動など) |
16:00 | 余暇時間(ブロック、手芸、パズルなど) |
17:00 | 帰宅送迎出発 |
17:00~17:30 | 保護者お迎え |
17:30 | 終了 |
<平日・高学年児の一日の流れ>
15:00~ | 送迎 |
15:30 | おやつ |
15:45 | 個別活動(自立支援課題・封筒作りなど) |
16:30 | 余暇時間(ブロック、手芸、パズルなど) |
16:50 | 帰りの会(活動の振り返り) |
17:00 | 帰宅送迎出発 |
17:00~17:30 | 保護者お迎え |
17:30 | 終了 |
<長期休みの一日の流れ>
10:00 | 開所 |
送迎 | 10:00~10:30頃自宅お迎え |
10:00~ | グループ活動(運動)個別活動(学習) |
11:45 | お昼 |
12:30 | 余暇時間 |
14:00 | 外出 |
16:15 | 帰りの会 |
16:30 | 帰宅送迎出発 |
16:30~17:00 | 保護者お迎え |
17:00 | 終了 |