【本の紹介】お子さんに関わるすべての人に、おすすめしたい一冊
こんにちは!
だんだんと暖かい日が増えてきたのがうれしい一方で、花粉の襲来に怯えている、子笑・児童指導員の川畑です。
今回のブログは少し趣向を変えて、お子さんを持つお母さんやお父さんのほか、私と同じように仕事としてお子さんをみている支援者の方など、お子さんに関わるすべての人におすすめしたい本を、紹介したいと思います。
今回ご紹介するのは、佐々木正美 著「この子はこの子のままでいいと思える本」(主婦の友社)です。
著者・佐々木正美先生という人
この本の著者・佐々木正美先生は、2017年に逝去されるまで、児童精神科医として長年子ども臨床の現場に立たれていた方です。
そしてご自身も父親として、3人の子を育て上げました。
また佐々木先生は、自閉症の方の支援プログラムであるTEACCHをノースカロライナ州で学び、我が国に伝えた第一人者でもあります。
しかし今回紹介する「この子はこの子のままでいいと思える本」は、TEACCHの方法論とか、そういうことを解説するものではありません。
本を開くと……
表紙を開き、編者のまえがきを読みつつ次のページを開くと、全国のお母さん・お父さんの切実な子育ての悩みが並ぶ「目次」にたどりつきます。
この本は、親御さんから寄せられた悩みに佐々木先生が答えていく、一問一答の形式で構成されています。
発達障害の子をどう伸ばしていけますか?(小2男の子・3歳女の子の母)
――発達障害でも、そうでなくても、自分のしたいことを決めるのは子ども自身。親は子どもの後ろで支え、応援するのです。
仕事に復帰するかしないかを迷っています(小1男の子・3歳女の子の母)
――専業主婦でいるのも、仕事に戻るのもお母さん自身の決断です。「子どものせい」にだけはしないことです。
他界した夫の不在をカバーしたい(3歳女の子の母)
――「父親にしかできないこと」などありません。お子さんを幸福に育てるためには、お母さんが心を癒し、幸せにならなければ。
いくつもの相談の中から3つを選び、それに対する佐々木先生の回答の、ほんのさわりの部分だけを抜き出してみました。
佐々木先生は、1つの相談に対し3~4ページの紙数を割いて、あたたかく、実直に、答えていきます。
あくまで一部の質問の冒頭部分と、佐々木先生からの回答の一部を抜き出したものなので、詳しくはぜひ本を手に取って読んでもらいたいと思います。
おすすめしたいこの本の読みかた
一問一答の育児書ということで、ご自身が抱えている悩みと同じものや近いものを目次から探して、答えを見る。
そんな、取扱説明書のような使いかたをしようとする人もいると思います。
しかし私は、あえてこの本は読み物のようにして、最初から最後まで順番に読み進めていってほしいと感じます。
そうすることで、この本を読み終える頃には、子どもを見つめ真摯に向き合いつづけた佐々木先生の姿が、思い浮かぶようになっていると思います。
その姿は、ある人には目標にしたい親の姿として映るでしょうし、ある人には尊敬できる支援者の姿として映ることでしょう。
子どもや環境が違えば、答えも違ってきます。
この本に書かれている佐々木先生の答えが、すべての親や支援者の悩みにそのまま使えるわけではありません。
しかし、佐々木先生の子どもへの向き合いかたは、子どもと関わるすべての人にとって、ありとあらゆる場面で、参考になることと思います。
できれば、心に余裕があるときに読んでみてください
この本に限らず、育児書やWebページなどの文章を読んで、責められてるように感じたり、ひどく落ち込んだり、耐えがたい怒りがわいてきたりしたら、それはあなたの心が弱っているサインです。
今まさに子育てに悩み、思いつめている親御さんにとっては、その言葉は少々きつく感じるかもしれません。
そのようなサインがあった時には、一度本を閉じて、周囲の人に相談してみてください。
必要であれば、医師やカウンセラーなどの専門家を頼ってください。
子笑に通所されている方であれば、児童発達支援管理責任者や、私たち児童指導員に、話をお聴かせください。
佐々木先生に見る、支援者に求められる姿
最後に、この本を読んで抱いた、支援者としての私の感想を書いて終わりにしたいと思います。
先にも書いた通り、この本の著者・佐々木正美先生は、我が国に初めてTEACCHという考え方を持ち帰って広めた、第一人者です。
いま、特別支援学校や放課後等デイサービスなどでは、絵や写真のカードを見せたり、ラインテープで囲って場所をわかりやすくするなどの方法が、当たり前のように使われています。
これらの方法は、TEACCHの考え方の一部が切り取られて、広まったものです。
TEACCHが佐々木先生のもとから離れ、方法の一部がTEACCHから離れ――
そんな中で時々感じるのが、方法論だけが独り歩きをしていないかということです。
「カードを見せれば自閉症の人はいうことを聞いてくれる」というように、TEACCHやTEACCHから生まれた方法を、自閉症の人を従わせるための道具と誤解していないか。
TEACCHさえやっていれば、自閉症の支援は十分だと誤解していないか。
そんなことはない!と思っていても、日々の支援に奔走しているうちに初心が薄れ、そのような勘違いに足をつっこんでしまいそうになることが、私にもあります。
そんなときにこの本を読み返すと、佐々木先生がどのような思いでTEACCHを広めようとしたかということに改めて気づかされ、ハッとなります。
また、TEACCHだけでなく、発達理論や愛着理論など、心理学や精神医学の様々な知見をもとに、子どもを理解しようとする佐々木先生の人柄に触れ、「自分ももっと勉強しなければ!」と気持ちを引き締めさせられます。
そういった意味でこの本は、親御さんだけでなく、私と同じように障害児支援の現場に立つ仲間のみなさんにも、おすすめしたい一冊です。
今回紹介した本
佐々木正美 著 「この子はこの子のままでいいと思える本」
2020年7月31日発行 主婦の友社
※今回のブログでの画像・文献紹介、一部引用にあたっては、日本複製権センターに問い合わせ、内容について掲載の確認をしています。
放課後等デイサービス子笑 川畑
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