「IQが下がった」は「知能が下がった」? ~IQと知能の話と、放デイ心理職の回顧録~

少しずつ雨の日も減り、夏の足音を感じる今日この頃。

青々とした空が待ち遠しい気持ちと、うだるような暑さの予感にうんざりとした気持ちが同居している、子笑・児童指導員の川畑です。

さて今回のブログでは、最近なにかとご相談を受けたり、話題にあがることが多くなった「IQ」や「知能」について、書いてみたいと思います。

「IQが下がった」 = 「?」

「2回目の知能検査を受けたんですが、1回目よりIQが下がっていたんです……」

子ども支援の現場にいると、沈痛な面持ちをした保護者の方から、このような相談を受けることがあります。

しかし、よく話を聴いてみると、「IQが下がった」ということを、本来とは違う意味でとらえていて、ひどく落胆されていることも少なくはありません。

 IQとは?

IQは、日本語では知能指数と呼ばれます。

知能を指数で表したものなので、「知能指数」です。

じゃあ、「知能」ってなんなの?となりますよね。

児童用の知能検査「WISC」を開発したWechslerは、知能を「目的を持って行動し、合理的に考え、効率的に環境と接する個人の総体的能力」と定義しています。

かみ砕くと、「何か物事をする時に、状況を把握し、どのようにすればよいかを考え、実際に行動に移す。この一連の流れを効率的に行う能力」と、なるでしょうか。

 そして、知能を測るために行われるのが知能検査で、知能検査の結果として出てくる数値の一つが「IQ(知能指数)」です。

 「IQが下がった」=「知能が下がった」ではない

さて、「IQが下がっていた」と聞くと、以前に知能検査を受けた時よりも知能が下がってしまったのでは?と思うかもしれません。

事実、そのようにとらえて、ひどく落胆してしまう保護者の方もいらっしゃいます。

しかし実際には、IQが下がっても、知能が下がったという意味にはなりません。

 

「指数」とは、ある基準を100として、比較する数量を百分比で表したものをいいます。

児童対象の知能検査として現在よく用いられるWISC-Vでは、検査を受けた方の全体的な知能を「FSIQFull-Scale IQ)」という、同年齢の平均を100とする指数で表します。

つまり、検査全体の点数が同年齢の平均に近いほど、FSIQ100に近い数値となり、同年齢の平均から離れるほど、FSIQ100から離れた数値になります。

理解できること・やれることは、お子さんの中で着実に増えている

さて、小学校入学前の5歳の時に行ったWISCの結果、FSIQ90だったお子さんがいたとします。

そのお子さんが中学校進学にあわせて、12歳で再度WISCを行うと、FSIQが70になっていました。

これは、そのお子さんの知能が下がったということになるでしょうか?

答えは「否」です。

この結果から言えるのは、「お子さんの5歳から12歳にかけての、全体的な知能の発達のペースが、同年齢のお子さんの平均に比べるとゆっくりで、平均との差が大きくなったようだ」ということです。

(実際には、検査の誤差や各能力の間の差、検査のバージョンの違いなど、さまざまなことを考慮します。)

ペースはゆっくりでも、お子さんの中では、理解できることや、やれることは着実に増えています。

知能は伸びているのです。

おわりに、感謝を込めて。

私は、放課後等デイサービス(放デイ)の職員として働き始める前は、病院で心理士として勤務していました。

当時の私は駆け出しで、以前よりIQが下がったお子さんの検査結果を見せて、保護者の方に、検査の教科書の文言をなぞるようにして、言っていました。

「お子さんの中では成長してますよ」と。

しかし、保護者の方の心には、響いていなかったように感じます。

その言葉を言っている私自身に実感がなかったのだから、当然です。

 

「こんなんじゃ、ダメだ!!」

そう思った私は、お子さんの日常に触れ、毎日を支援していくことができる、放デイの世界に飛び込みました。

それからもうすぐ5年になります。

子笑で働き始めてからは、39か月が経ちました。

この間に、たくさんのお子さんたちから、たくさんのことを教えてもらいました。

一つずつ経験を積み重ね、理解できることや、やれることが増えていく姿を、お子さんたちに見せてもらいました。

検査で測れるような力も、測れないような力も、みんな、個々のペースで着実に成長させていました。

もし以前と同じような状況で、お子さんや保護者の方と向き合うことがあったとしても、今なら実感をもって、言える気がします。

お子さんたちそれぞれが歩んできた時間に思いをはせ、積み重ねてきた成長を抱きしめて。

「お子さんの中では成長してますよ」と。

その上で、周囲との差が大きくなった能力があるという事実は受け止めて。

「じゃあ、どんなふうにしたらやりやすくなるか、一緒に考えていきましょう!」と。

そういうふうにして、お子さんや保護者の方に寄り添うための力を、放デイという場にたくさん育ててもらったと思っています。

これまで私に関わってくれたすべてのお子さんと、保護者の方々に、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

児童発達支援・放課後等デイサービス 子笑  川畑

東京都あきる野市油平87-3 シャルマンルーフ2F

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